福岡高等裁判所 昭和27年(う)2141号 判決
弁護人の控訴趣意第一点(証拠能力なき証拠を採証に供した違法)について。
(前略)
次に司法巡査作成の業務上過失傷害致死被疑事件報告書は、司法巡査が本件事故発生の直後に辻病院よりの連絡により認知した本件被疑事実を警察署長に報告した書面であり、その記載内容からして、何人からの電話連絡により認知したものであるか不明であり、自ら現場を検証した結果を記載したものとも見えず、本件事故に関し認識した事実に止らない意見、判断とみるべき事項をも報告した書面ということができること所論のとおりであり、従つて該書面は刑事訴訟法第三百二十一条所定のいづれかの書面に該当するものとはいえないから、弁護人よりその取調の請求があつて検察官から提出せしめて、取調がなされたことについて、訴訟関係人に証拠とすることの同意があつたか否かを問うまでもなく、これを以て判示犯罪事実を認定する証拠とすることは許されないものと解すべきであり原判決がこれを罪証に供したのは、採証の法則に反することまさに所論のとおりである。しかしながら、原判決が挙示する右報告書以外の証拠について検討してみると、爾余の証拠のみを綜合して、判示事実は優にこれを認定することができるし、前記報告書により裁判官に対し不当に予断を抱かしめたものと考えられないから、前記のごとき違法は未だ判決に影響を及ぼすものとは認め難く、判決を破棄すべき事由とはなし得ない。